朝から雨が降っている。
春なのにこのところ天気がよくない。




昨日は久しぶりにとても穏やかで、
中学校へ入学したばかりの頃を思い出させる天気だった。
大きく不似合いな制服を着て、小5の頃から乗っている愛車のかごに、
教科書でパンパンの指定鞄と、プリングルズの詰まった缶を入れて走る。
「ほの、ほの。今日は佐川まで行こう。」「いこいこ!」
そうやって私たちは、いつも唐突に『旅』が始まった。




飽きることはない。
新しい発見や知らない場所へ立ち入るスリル感が堪らなくて、
学校が終わった後は必ずどこかに行く。
予定というものは私たちには存在せず、
気の向くまま時間が許す限り遠くへ駆け抜けた。
今が1番大切で、だから明日のことなどどうでもいい。





それからテスト期間や部活で忙しくなり、いつの間にか旅をすることはなくなった。
新しい友人も2人の間に入り、私たちはお互い知らないことが増え、酷く傷つけ合った。




あれから2度目の春。
過去を塗りつぶし、何も知らない他人へと変化した私たちは、もう同じ学校にはいない。
いつか同じ高校へ行こうと言い合った日々は、唯ひたすら今を楽しんでいた。
春の暖かさは、時に懐かしい。



あの頃ずっと空は晴れていた。